ヘルペスと帯状疱疹

●ヘルペス・帯状疱疹

ある日唇がピリピリチクチクしかゆみや痛がゆさを感じ、ついには赤く腫れた水ぶくれができて痛むも最後はかさぶたができ治っていく。
今まで何度も繰り返している人はピリピリチクチクした段階ですぐ「口唇ヘルペス」だと気づきます。
口唇ヘルペスは日本の感染率は50-70%、世界では50歳未満で約37億人と言われています。
ヘルペス(herpes)はギリシャ語の(herpein=這う、ゆっくり動く)という言葉に由来し紀元前からすでに記述が残っています。

ヘルペスの原因は`ウイルス`です。
ウイルスは地球上の微生物の中で最も多く存在し、細菌のおよそ1/1000〜1/100の大きさで核酸(DNAまたはRNA)をタンパク質で包んだだけの単純構造です。
ウイルスの存在が分かったのは電子顕微鏡が出現した20世紀に入ってからで、ヘルペスウイルスは1960年に発見されました。
もちろんヘルペスだけでなく肝炎、エイズ、天然痘、麻疹、ポリオ、狂犬病、口蹄疫、インフルエンザ、コロナ、豚熱などの様々なウイルスが判明していきます。
ウイルスはそのDNAやRNAの配列を解析すると誕生時期を推定できます。
例えばコロナウイルスの祖先は約1万年前に誕生したと推定されています。
1万年前と言えば人が定住を始め動物を飼うようになり野生動物のウイルスや細菌が人に感染するようになったころです。(人獣共通感染症)
そして人口密度の増加や人々の移動距離が長くなりスペイン風邪や、新型コロナのように爆発的に感染を起こすパンデミックの時代になりました。

2003年にすべての「ヒト遺伝子の解析」が完了するとその8%ほどに「ウイルス由来」のDNA配列が散在していることが判明しました。
様々なウイルスのDNAがいつのまにか人間の体内に侵入(伝播)していたわけです。
侵入されるとなんだか有害のように思えますが哺乳類の妊娠・出産に欠かせない胎盤はウイルス由来の遺伝子によってつくられたことが近年わかってきました。
ウイルスが脳の機能や筋肉の発生にも関係していることも明らかになってきています。

ヘルペスウイルスについては地球上に約160種あり、そのうち人間に感染するヘルペスウイルスは8種類です。
8種類それぞれが違った症状を引き起こしヘルペス、帯状疱疹・水ぼうそう、脳炎、伝染性単核球症や肝炎、肺炎や網膜炎、突発性発疹、カポジー肉腫、これ以外に最近の研究ではうつ病や原因不明の神経痛や頭痛、めまいにもヘルペスウイルスが関与している可能性が出ています。
この中で身近なものは「単純ヘルペスウイルス」と「帯状疱疹のウイルス」です。
口唇ヘルペスは単純ヘルペスウイルスT型(HSV-1)、性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルスU型(HSV-2)から発症します。
帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス (VZV) によって発症します。
ヘルペスと帯状疱疹のウイルスは8種類の中の2つですが、違う種類なのでヘルペスだから帯状疱疹になるわけではなく逆もしかりです。

ヘルペスと帯状疱疹には共通点と相違点があります。
共通点は「神経細胞内」に潜み、免疫力が低下するとまさに這い出てきて発症する点です。
そもそも神経細胞はウイルスが容易に侵入できないよう守られています。
何らかの進化でそこに侵入したヘルペスウイルスにとって神経細胞は逆に免疫に攻撃されず増殖しやすい天国なのです。
(最近コロナも脳の神経細胞に感染したとの研究発表があります。)
相違点は這い出てくるルートです。
ヘルペスウイルスが這い出てくるときのルートは神経細胞ではない(髄鞘)ので神経自体にダメージは与えません。
しかし帯状疱疹のウイルスは細胞から細胞へ感染しながら皮膚表面に移動してくるため通り過ぎた神経細胞にも多大なダメージを与えます。
このためヘルペスは患部のみチクチクしますが、帯状疱疹は皮膚だけでなく神経までズキズキと強い痛みが生じます。

口唇ヘルペスは子どものうちに感染して免疫ができることが普通でしたが近年の無菌・除菌など清潔志向により最近では30代で50%弱しか免疫を持っていないそうです。
そのため口唇ヘルペスは多くの人が感染しており、20-30代の方で2人に1人、60代以上ではほとんどの人が感染しているといわれています。
なお非常にまれですが成人の再発時に脳炎を起こすこともあり抗ウイルス薬が無かった頃の死亡率は60-70%もあったそうです。
`性器ヘルペス`は性交渉の若年化により増加しています。
やはり生殖器や周囲の皮膚や粘膜に小さな水疱やただれが生じかゆみや痛みを伴うことがあり再発頻度も高いです。
`口唇ヘルペス`は顔など上半身、`性器ヘルペス`は下半身の神経細胞に潜みます。


`帯状疱疹`は顔から足まで感覚神経のある場所ならどこにでも発症しますが好発部位は「胸神経」「三叉神経」です。
これは水ぼうそうの好発部位と一致していてるためと考えられています。
昔、帯状疱疹が体を一周した死ぬという噂がありました。
帯状疱疹は神経におこる病気ですが体の左右で神経は別々ですから帯状疱疹は体の片側におこります。
ただウィルスが血液を介して全身に広がり全身に発疹ができ重症化することはあるようです。
また発症した神経領域により角膜炎,髄膜炎、脳炎、また顔面神経麻痺・めまい・難聴(Ramsay Hunt症候群)などが起き得ます。
帯状疱疹は本来なら一度発症したら再発しない疾患でしたが高齢化のせいなのか最近は再発例が増えています。
さらに厄介なのが皮疹が治った後も神経痛が3ヶ月以上残る「帯状疱疹後神経痛」です。
ウイルスが通過した神経細胞がボロボロにされてしまい痛みが続くわけです。
場合によっては衣服がこすれたり少し触ったりと普段気にならないような刺激でも痛みを感じてしまう状態になります。(アロディニア)
帯状疱疹の痛みはかなり強い場合が多く色々な鎮痛剤・抗てんかん薬や抗うつ薬を使用しますが抑えきれないケースも多いです。

ヘルペスも帯状疱疹も体力が落ちたり免疫力が低下すると発症します。
ストレス・疲労、睡眠不足・月経前・風邪、発熱・季節の変わり目・日焼け・歯科受診などきっかけは様々です。
ヘルペスが出たら体を休めることです。
帯状疱疹はこれらとともに重大な病気があることもありますので健診を受けることも必要でしょう。

治療は女性などヘルペスが気になり早く治したいのであれば抗ウイルス剤が効果的です。
今は抗ウイルス剤の塗り薬を薬局で購入することができます。
帯状疱疹は少しでも早く確定診断をして抗ウイルス剤を使うことがポイントです。
なお日本では帯状疱疹ワクチン(水ぼうそう)がありますがヘルペスはまだ実用化に至っていません。

・ヘルペスと生薬

口唇ヘルペスの塗り薬が手軽に薬局で買えるようになりました。
ただし個人差はあるものの副作用もあります。
軽度の場合は、薬の使用を中止して様子を見てもよいでしょう。
ヘルペスウイルスを抑える生薬を使うことで回復を早くします。

・帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は(1)炎症が始まり熱を持ちますが(2)徐々に熱が冷めやがて温めると痛みが軽快する状態へ移行します。
この病気については発症のなるべく早い段階での抗ウイルス薬の服用が大切です。
それは炎症を少しでも早く収めることにより帯状疱疹後神経痛という後遺症を防ぐためです。
この時(1)(2)の段階で漢方薬を併用することも後遺症を防ぐキーポイントです。

不幸にも帯状疱疹後神経痛になってしまった場合はケースによりかなり強い痛みになります。
病院で鎮痛剤・抗うつ剤などが処方されますが少しでも服用量や期間を減らすためにやはり漢方薬を併用することです。
アロディニアは神経がボロボロカサカサになった状態ですのでそれを少しでも早く修復する漢方薬をお勧めしています。
詳しくは個別でご相談を承ります。

・光線療法

ヘルペスも帯状疱疹もウイルスが再活性化する詳しいメカニズムは明らかにされていません。
しかし老化や病気、手術などで免疫力が低下したときが引き金になっています。
可視光線療法「コウケントー」の症例については直接お尋ねください。